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選評  出版関係物故者  放送関係物故者

対象作品は発表された年ではなく、サイト主宰者が実際に目にした年のものとしています。



部門ノミネート作品ベスト作品
図書部門 小説の部 「国盗り物語」 該当作なし
漫画の部 「火の鳥 14」 該当作なし
映像部門 映画の部   該当作なし
テレビドラマの部 「今ここにある危機とぼくの好感度について」「漂着者」「白い濁流」「日本沈没−希望のひと−」 該当作なし
アニメーションの部 「ちびまる子ちゃん」「クレヨンしんちゃん」「鬼滅の刃」 「鬼滅の刃」

2021年選評

与志田選2021年総括。ノミネートに入れていない作品から一言。『黄金の日日』−再放送を機に全話を見たらやはりものすごく面白い。昨今の大河は何なんだと思えるほど。1回目からテンポもいいし、とにかく内容にしまりが感じられる。これぞ大河という感じ。それと比較するのは酷だが、昨今の大河はやはり面白くない。『青天を衝け』など意味もなく登場人物が多すぎ、ひどく散漫な印象。とにかく主要人物からしてキャラが立っていない。『ウルトラQ』、『ウルトラセブン』−録画の撮りためがなくなってきたので、4Kリマスター版であらためて全話を見る。( 22/05/14 )

<図書部門>
『国盗り物語』(司馬遼太郎・新潮社刊)
途中で違う本を読んだりして、じつはまだ読み終わっていません。もう3年がかりです。

<映像部門>
『今ここにある危機とぼくの好感度について』( 4/24〜 5/29・NHK総合)
そのタイトルからしてちょっと毛色の変わったドラマでした。社会批評を含みながらブラックなコメディーという味付け。大学の広報部が舞台というのも、ドラマの題材としてなんだか少し時代がかっているような…。
『漂着者』( 7/23〜 9/24・テレビ朝日系)
風呂敷を広げるだけ広げて収拾のつかなくなる尻切れトンボ的な終わり方。最初から続編を作るつもりで始めたのでしょうか。なんだか最近こういう作りの連続ドラマが多く、よくない傾向のように思います。
『白い濁流』( 8/22〜10/10・NHK BSプレミアム)
回を追うごとに里見と財前の役柄が置き換わっていくような「白い巨塔」の逆構図的な面白さがありました。医療ものではないけれど、製薬業界が舞台なので物語の転がし方に近しいところがあってなおさらそう感じました。
『鬼滅の刃』( 9/11〜22/ 2/13・フジテレビ系)
少し前から話題になっていたのは知っていましたがそれほどのものとは思わずにいたところ、たまたま見始めたらはまりました。映像がいいし、ストーリー、キャラ立てもしっかりしているのに感心。監督の個性ばかりを打ち出した昨今流行りのわけのわからない作りのアニメじゃないところがいいです。ある意味、古き良き時代のアニメという印象で好感が持てました。TVシリーズの再編集版にはじまり、『無限列車編』、『遊郭編』と半年をかけ堪能です。


2021年出版関係物故者

政治や経済にまつわる不合理を反権力の立場から描いた推理小説や、新聞記者が主人公の「天使シリーズ」で知られる直木賞作家の三好徹(みよし・とおる)氏が 4月 3日、誤嚥性肺炎のため死去。90歳。( 4/ 6 読売新聞朝刊より)
東京都生まれ。横浜高等商業学校(現・横浜国立大)卒。1950年に19歳で読売新聞社に入社し、横浜支局に配属されたが結核を患い、その療養の間に小説を書き始めた。59年に「遠い声」で文学界新人賞次席となり、60年に政界が舞台の推理小説「光と影」を発表。以後、スパイ小説などでも活躍した。
66年に読売新聞を退社して文筆に専念し、67年に海外特派員を主人公にした「風塵地帯」で日本推理作家協会賞。68年には家庭裁判所の調査官が主人公の「聖少女」で直木賞を受賞。同作は自身が横浜支局で警察担当だった経験を生かした作品で、その後、地方支局の警察貴社を主人公にした「天使シリーズ」を40作以上発表した。
幕末・明治の人物やゲバラら革命人を描いた伝記小説も多い。79〜81年には日本推理作家協会理事長を務めた。

漫画家の久松文雄(ひさまつ・ふみお)氏が 4月16日、歯肉がんのため死去。77歳。( 4/19 読売新聞朝刊より)
名古屋市出身。30世紀の未来から20世紀にやってきた主人公の活躍を描いた「スーパージェッター」や「冒険ガボテン島」は1960年代にテレビアニメが放送され、人気を博した。後年、日本史や中国史を題材にした作品を数多く手がけ、全7巻の「まんがで読む古事記」では古事記の全編を漫画化した。

健康的なお色気ととぼけた作風で知られた漫画家の富永一朗(とみなが・いちろう)氏が 5月 5日、老衰のため死去。96歳。( 5/23 読売新聞朝刊より)
大分県の小学校教員を経て、1951年に上京。60年から週刊誌で「ポンコツおやじ」「チンコロ姐ちゃん」の連載を始めて人気漫画家の仲間入りをした。78年には読売新聞・都民版などで四コマ漫画「東京パンチ」を連載した。
76年〜94年に放送されたテレビ番組「お笑いマンガ道場」にレギュラー出演し、盟友の漫画家、鈴木義司さんとの軽妙なやりとりでも親しまれた。

ダーク・ファンタジー「ベルセルク」で知られる漫画家の三浦建太郎(みうら・けんたろう)氏が 5月 6日、急性大動脈解離のため死去。54歳。( 5/21 読売新聞朝刊より)
代表作「ベルセルク」は中世ヨーロッパを思わせる世界を舞台に、巨大な剣を振るう傭兵ようへいが、仲間の騎士団を滅ぼした暗黒の神々に復讐ふくしゅうする物語。細密で迫力あるアクション場面は、その後の漫画やアニメに多大な影響を与えた。
1989年に連載開始、92年からは漫画誌「ヤングアニマル」(白泉社)で連載されていたが、未完に終わった。単行本は既刊40巻。延べ20か国・地域で翻訳され、世界総発行部数(電子版含む)は5000万部以上。テレビアニメや劇場アニメ化、ゲーム化もされた。
その他の作品に「ギガントマキア」、原作とプロデュースを務めた「ドゥルアンキ」など。


2021年放送関係物故者

「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」など、テレビ史に残る数々の名作ドラマの演出を手がけた、元TBS常務取締役の鴨下信一(かもした・しんいち)氏が 2月10日、肺炎のため死去。85歳。( 2/11 読売新聞朝刊より)
東京都出身。東京大卒業後、1958年にラジオ東京(現・TBSホールディングス)に入社。「寺内貫太郎一家」(74年)の制作に携わった後、家族のあり方を問うた「岸辺のアルバム」(77年)や、コンプレックスを抱えた若者の群像劇「ふぞろいの林檎たち」(83年)、禁断の愛を描いた「高校教師」(93年)など多くの話題作を演出した。
また、舞台演出や著作など幅広く活動。93年に取締役制作局長に就き、常務取締役や上席執行役員を歴任。2003年には社長室顧問に就任していた。

日本を代表する名アニメーターで、宮崎駿監督の「ルパン三世 カリオストロの城」で作画監督を務めるなど、映画やテレビで数々の名作を手がけた大塚康生(おおつか・やすお)氏が 3月15日、心筋梗塞のため死去。89歳。( 3/17 読売新聞朝刊より)
島根県津和野町生まれ。1956年、東映動画(現東映アニメーション)に入社し、日本初のカラー長編アニメーション映画「白蛇伝」に参加。「わんぱく王子の大蛇退治」などの原画を担当した。作画監督を務めた「太陽の王子 ホルスの大冒険」では演出に高畑勲監督を推薦し、世に出る契機を作った。
テレビアニメ「ルパン三世」(第1シリーズ)では、キャラクターデザインと作画監督を担当し、大人の鑑賞に堪えるアニメとして、ルパンの愛銃・ワルサーP38やクルマなどをリアルに設定。アニメーションの命はポーズや動きであるとの信条から、“大塚調”とも呼ばれるダイナミックで人間くさい演技づけを得意とし、高畑監督の「パンダコパンダ」「じゃりン子チエ」や、宮崎監督の「未来少年コナン」「ルパン三世 カリオストロの城」など数々の名作で大きな役割を果たした。

「おしん」「渡る世間は鬼ばかり」などの名作ドラマを手がけた脚本家で、文化勲章受章者の橋田寿賀子(はしだ・すがこ)さんが 4月 4日、急性リンパ腫のため死去。95歳。( 4/ 6 読売新聞朝刊より)
現在の韓国・ソウル生まれ。日本女子大卒業後、松竹に入社。1959年に独立し、石井ふく子プロデューサーと組んだTBSのドラマ「愛と死をみつめて」で、頭角を現した。
83〜84年のMHK連続テレビ小説「おしん」は、東北の寒村に生まれた女性が、明治から昭和の激動の時代を生き抜く姿を描いた。平均50%を超す高視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録、日本だけでなく世界中でヒットした。
一貫して女性の視点で時代を見つめ、NHK大河ドラマ「おんな太閤記」「いのち」「春日局」などの作品を手がけた。90年にスタートしたTBSの「渡る世間は鬼ばかり」は、嫁としゅうとめの確執など家族の問題を、身近な社会問題と絡めて描き、国民的人気番組になった。2011年に第10シリーズで終了した後も、毎年のように特別版が制作された。
私財を投じて橋田文化財団を設立、優れたテレビ番組や放送関係者などを顕彰する橋田賞を創設した。

光学撮影技師の中野稔(なかの・みのる)氏が 4月 4日、肝不全のため死去。82歳。( 4/ 7 読売新聞朝刊より)
東京都出身。円谷英二に弟子入りし、現在の円谷プロダクションが設立された時からのメンバーだった。「ウルトラQ」や「ウルトラマン」などウルトラシリーズの初期作品で光学撮影(合成)を担った。バルタン星人が多数に分身する有名な場面の合成技術などを手掛けた。

「ドラえもん」などを手掛け、日本を代表するテレビアニメや特撮番組の作曲家だった菊池俊輔(きくち・しゅんすけ)氏が 4月24日、誤嚥性肺炎のため死去。89歳。( 4/29 読売新聞朝刊より)
青森県弘前市出身。日本大学芸術学部卒業後、1961年に映画音楽でデビュー。「こんなこといいな」の歌い出しで知られる「ドラえもんのうた」、「迫るショッカー」と始まる「仮面ライダー」の主題歌を始め、「タイガーマスク」「忍者ハットリくん」「Dr.スランプ アラレちゃん」など国民的な人気を集めたアニメや特撮作品の音楽を作曲した。「暴れん坊将軍」「Gメン'75」といった時代劇や刑事ドラマに至るまで、幅広い分野の主題歌などを作った。

声優やラジオパーソナリティーとして人気を博した若山弦蔵(わかやま・げんぞう)氏が 5月18日、心不全のため死去。88歳。( 6/ 1 読売新聞朝刊より)
渋い低音の声の持ち主で、「007」シリーズでショーン・コネリーさんが演じたジェームズ・ボンド役や、「スパイ大作戦」の特務機関のリーダー、フェルプス役など、洋画や海外テレビドラマの日本語吹き替えを多く担当した。テレビ朝日系の時代劇「暴れん坊将軍」のナレーターも務めた。
また、TBSラジオの平日の生放送番組「若山弦蔵の東京ダイヤル954」を長年担当するなど、ラジオパーソナリティーとしても活躍した。日本点字図書館で朗読ボランティアも続けていた。

多くのCM音楽やアニメソングを手がけ、都はるみさんのヒット曲「北の宿から」などでも知られる作曲家の小林亜星(こばやし・あせい)氏が、 5月30日、心不全のため死去。88歳。( 6/15 読売新聞朝刊より)
東京都出身。子どもの頃から音楽に親しみ、慶応大在学中には米軍関連のクラブでビブラフォンを演奏した。卒業後、放送関係の仕事をしていた作曲家の服部正さんに師事。1961年のレナウンのCM音楽「ワンサカ娘」が評判となり、一躍人気作曲家に。テレビメディアの成長期に、リズミカルで親しみやすいメロディーがお茶の間で愛された。
代表作は、CM音楽が「この木 なんの木 気になる木」と歌う「日立の樹」、子供向けの歌は「ピンポンパン体操」、アニメソングの「ひみつのアッコちゃん」など。75年に発売された演歌「北の宿から」は、翌年の日本レコード大賞に輝いた。
大柄でユーモラスなキャラクターを生かし俳優、タレントとしても活躍。74年にはテレビドラマ「寺内貫太郎一家」で、頑固オヤジ役を演じた。2002年のNHK連続テレビ小説「さくら」などにも出演。クイズ番組「クイズヒントでピント」では、さえた回答で周囲をうならせた。同じ昭和一けた生まれの野坂昭如さん、永六輔さんと「世直しトリオ」を名乗って、歌や文章などで社会にもの申す活動も行った。15年に日本レコード大賞功労賞。