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選評  出版関係物故者  放送関係物故者

対象作品は発表された年ではなく、サイト主宰者が実際に目にした年のものとしています。



部門ノミネート作品ベスト作品
図書部門 小説の部 「老乱」「テロリストの処方」 該当作なし
漫画の部 「長男の時代」「暗黒神話」 該当作なし
映像部門 映画の部 「シン・ゴジラ」「ブレードランナー2049」「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」 該当作なし
テレビドラマの部 「おんな城主 直虎」「フランケンシュタインの恋」「全力失踪」「鬼畜」 該当作なし
アニメーションの部 「ちびまる子ちゃん」「クレヨンしんちゃん」 該当作なし

2017年選評

与志田選2017年総括。ノミネートに入れていない作品から一言。『火花』−原作は読んでおらずNHKのドラマ版を見ての感想だが、なぜ本作の評価が高いのかわからない。登場人物にまったく感情移入することができず、後味も非常に悪かった。『やすらぎの郷』−これも倉本聰という大家の冠ばかりに注目が集まっているようで、作品として面白いとは思えない。後年の倉本は話の持って行き方が無理やりで、自分の書くものは完璧だというようなふしがあるところがいまひとつ好きになれない。視聴者に伝えようとするメッセージも押し付けがましい。加えて石坂浩二の演技もヘンだ。 『精霊の守り人U/最終章』−結局最後まで惹かれるところはなかった。やっと終わってくれたという感じすらする。大森寿美男が脚本を書きとおし、最終章では樋口真嗣が監督に招かれたりしたけど、どうにものれないのはやはりファンタジーだからか…。( 18/04/05 )

<図書部門>
『老乱』(久坂部羊・朝日新聞出版刊)
老い衰える老人と、それを介護する家族の視点が交互に描かれ、随所には認知症に関する新聞記事の引用が挟まれるという趣向を凝らした構成。奇抜で刺激的な展開は抑えられ、現実をひたすらリアルに描写していくことで認知症や介護といった出口の見えない社会問題の怖さを逆に伝えています。この年、同作者の作品ではほかに『虚栄』、『反社会品』、『テロリストの処方』も読みましたが、医療をテーマにしながらもそれぞれに異なる筆致で、この作者は作家としての幅をいよいよ広げていると感じました。
『長男の時代』(小池一夫/川崎のぼる・集英社刊)
雑誌連載時に途切れ途切れに読んではいたものの全編を通して読んでいなかったので、どういう話だったのか、また最後がどうなったのか長い間気になっていた作品。ヤフオクで当時の単行本を全巻入手できたのを機に読み返してみました。ところがあらためて読んでみるとなんだか消化不良の感は否めません。「長男とは」「家族とは」と説教じみた台詞がやたら飛び交うくせに、主人公・隼人はどういう経緯で殺し屋になったのか結局最後までバックボーンが描かれないままで、最終回も“第一部完的”な終わり方。ただ絵はゾクゾクするほどすごいです。
『暗黒神話』(諸星大二郎・集英社刊)
新たに100ページもの加筆・修正が加えられた完全版というキャッチに惹かれて、40年前の初期単行本は持っていながらも豪華愛蔵版を購入。ストーリーの骨子はおそらく変わっていないので、最初に読んだときのような衝撃はないのですが…。

<映像部門>
『シン・ゴジラ』(11/12・テレビ朝日系)
世間で評判になっているほどには面白く感じられませんでした。ドキュメンタリー調で人物が描かれていないためでしょうか。とにかくシーンの切り替えが唐突で、見ていて疲れます(それが庵野監督の作風だったりするのですが…)。
『ブレードランナー2049』(10/27公開)
―2017年アメリカ ライアン・ゴズリング ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督
5年ぶりに入った映画館で、35年を経ての続編を見ました。ストーリーが入り組んでいていささかわかりにくいところもありましたが(後でWikiを読んでそういうことだったのかと)、雰囲気に関しては前作をよりよく継承していると思いました。上映時間の長い映画はトクしたような気分になれるのですが、この内容で2時間43分はさすがに長いです。
『おんな城主 直虎』( 1/ 8〜12/17・NHK総合)
視聴率的には苦戦を強いられ、かつての大河ではありえなかった新しい試みに「をいをい」と突っ込みを入れたくなるところもありましたが、決してつまらなくはなかったです。ドラマとしては人間関係の機微がうまく描かれていて、むしろ意外と面白く見ることができました。
『フランケンシュタインの恋』( 4/23〜 6/25・日本テレビ系)
設定と展開に無理があるなと思いつつも、そのズレまくっているところに妙にはまって、最後まで見続けてしまいました。無垢な魂の彷徨を描こうとしたのでしょうが、この脱力具合は制作者の意図してのことなのか、全編どうにもゆるいです。
『全力失踪』( 9/ 3〜10/22・NHK BSプレミアム)
とことん救いのないめずらしく辛口のドラマになるのかと思いきや、ラストはわりとヒューマンな結末に落ち着いてしまった感じ。それでも主人公が日本各地を点々とするロードムービー的な手法が面白く、全8回で終わるにはちょっと惜しい気がしました。


2017年出版関係物故者

「孤独のグルメ」の作画で知られ、フランスなどでも高い評価を受けた漫画家の谷口ジロー(たにぐち・じろー)氏が 2月11日、多臓器不全のため死去。69歳。( 2/13 読売新聞夕刊より)
鳥取県出身。京都の会社員生活を経て上京し、1970年代初めに「嗄れた部屋」でデビュー。動物ものやハードボイルド、SFなど幅広く作品を発表した。代表作に手塚治虫文化賞マンガ大賞などを受けた「『坊ちゃん』の時代」(原作・関川夏央)、「犬を飼う」、「神々の山嶺」(同・夢枕獏)など。町の飲食店を一人で食べ歩く「孤独のグルメ」(同・久住昌之)は、94年に始まり、2012年からドラマ化されて人気を集めた。
フランスの芸術性の高い漫画に影響を受け、「遥かな町へ」をはじめ、海外でもファンが多かった。ヨーロッパ各国で多くの賞を受賞、仏芸術文化勲章シュバリエも受章した。

漫画家の津雲むつみ(つくも・むつみ)さんが 3月 4日、肺がんのため死去。65歳。( 3/ 5 読売新聞朝刊より)
石川県出身。1967年にデビュー。代表作に森田健作さん主演でテレビドラマ化された「おれは男だ!」や「風の輪舞」など。76年に「彩りのころ」、93年に「闇の果てから」で日本漫画家協会賞・優秀賞を受賞した。

「孤愁の岸」「マダム貞奴」など重厚な歴史小説で知られた作家で文化勲章受章者の杉本苑子(すぎもと・そのこ)さんが 5月31日、老衰のため死去。91歳。( 6/ 3 読売新聞朝刊より)
東京生まれ。文化学院卒。1952年、「燐の譜」が「サンデー毎日」の懸賞小説に入選。吉川英治に師事し、約10年修行した。濃尾三川で治水の難工事を行った薩摩藩士を巨視的に描く長編「孤愁の岸」で63年、直木賞を受賞し、歴史小説専門の女性作家として地位を確立した。
戦時中、学徒出陣の学生を見送った「捨て石の世代」としての青春体験を基に、歴史上の有名無名の人物を権力との関連など広い視野で捉えた作品を古代から近代まで幅広く執筆。78年、「滝沢馬琴」で吉川英治文学賞、86年、「穢土荘厳」で女流文学賞、2002年菊池寛賞。「マダム貞奴」「冥府回廊」は85年、NHK大河ドラマ「春の波濤」の原作となった。能や歌舞伎鑑賞が趣味で、古典への造詣も深かった。

作家の山野浩一(やまの・こういち)氏が 7月20日、食道がんのため死去。77歳。( 7/21 読売新聞朝刊より)
1964年に短編小説「X電車で行こう」でデビュー。前衛的なSF小説やSF評論のほか、競馬評論家としても知られた。

漫画家の板井れんたろう(いたい・れんたろう)氏が12月 6日、進行性核上性まひのため死去。81歳。(19/ 1/31 読売新聞朝刊より)
兵庫県出身。1960年代に、「ポテト大将」など明朗なギャグ漫画で活躍、タツノコプロの人気アニメ「おらぁグズラだど」の漫画連載でも人気を博した。


2017年放送関係物故者

テレビ・映画プロデューサーの近藤晋(こんどう・すすむ)氏が 2月 2日、誤嚥性肺炎のため死去。87歳。( 2/ 3 読売新聞夕刊より)
NHK大河ドラマ「黄金の日日」や映画「陰陽師」などを手がけた。

「ツィゴイネルワイゼン」「けんかえれじい」などで知られる映画監督の鈴木清順(すずき・せいじゅん)氏が 2月13日、慢性閉塞性肺疾患のため死去。93歳。( 2/23 読売新聞朝刊より)
東京・日本橋生まれ。1948年、旧制弘前高校卒業後、松竹に入社。54年、日活に移籍し、56年「港の乾杯 勝利をわが手に」で監督デビュー。「関東無宿」「東京流れ者」など、鮮烈な色彩と映像感覚の“清順美学”に貫かれた作品群で若い映画ファンを魅了した。高橋英樹さん主演の青春映画「けんかえれじい」でも評価を集めた。
67年に宍戸錠さん主演の「殺しの烙印」を発表するが、その翌年、日活側は、作風が難解な「わからない映画」を作るなどとして鈴木さんとの専属契約を解除し、監督作のフィルム貸し出しを拒否。裁判闘争となり、71年に和解するが、映画を撮れない状態が続いた。
77年、復帰第1作として、「悲愁物語」を監督。80年の「ツィゴイネルワイゼン」では、幻想と現実が交錯する中で繰り広げられる男女の物語を圧倒的な映像美をもって描き、同年度の国内映画賞を軒並み受賞。ベルリン国際映画祭ではコンペティション部門に出品され特別表彰を受けた。
その後の「陽炎座」「夢二」「ピストルオペラ」でも華麗な映像絵巻を展開、時を重ねてなお若者を魅了し続けた。2005年「オペレッタ狸御殿」がカンヌ国際映画祭の特別招待作品となり、公式上映に出席。満員の会場でスタンディングオベーションを受けた。同作が最後の監督作となったが、その作品の数々は、世代を超えて国内外の監督たちに影響を与え続けた。
白いあごひげとひょうひょうとしたキャラクターが買われ、俳優としても、映画、テレビにも多数出演し、高い評価を集めた。元NHKのアナウンサーの鈴木健二さんは実弟。1990年に紫綬褒章、96年に旭日小綬章を受賞。

「我が良き友よ」などヒット曲で知られる歌手のムッシュかまやつ氏が 3月 1日、膵がんのため死去。78歳。( 3/ 2 読売新聞夕刊より)
東京出身。父親はジャズ歌手のティーブ釜萢。高校在学中にカントリー・アンド・ウエスタンの学生バンドを結成。1964年には堺正章さんらが所属するバンド、ザ・スパイダースの正式メンバーとなり、ボーカル兼ギタリストとして「フリフリ」「あの時君は若かった」「夕陽が泣いている」などヒット曲を連発。グループサウンズブームの中心的な存在となった。
同バンド解散前年の70年からソロ活動を本格化。自身で作曲した「どうにかなるさ」「四つ葉のクローバー」、吉田拓郎さんとの共演曲「シンシア」などが人気を集めた。とぼけたような独特の歌い方で、75年に吉田さんから提供された「我が良き友よ」は、約70万枚を売る大ヒットとなった。
その後も多彩な作品を制作。テレビドラマ「時間ですよ」シリーズなどにも出演していた。

1970年代初頭から活動し、代表曲「教訓T」などで知られるシンガー・ソングライターの加川良(かがわ・りょう)氏が 4月 5日、死去。69歳。( 4/ 6 読売新聞朝刊より)
1970年に全日本フォークジャンボリーに出演。翌年出した初アルバムに収録された「教訓T」は、反戦歌的な内容で「命を すてないようにネ」「にげなさい かくれなさい」とストレートに訴え、評判となった。フォークのブームを盛り上げ、吉田拓郎さんが歌った「加川良の手紙」の作詞者としても知られる。

鳳啓助さんとの夫婦漫才コンビで人気を集め、女優としても活躍した京唄子(きょう・うたこ)さんが 4月 6日、肺炎のため死去。89歳。( 4/ 7 読売新聞夕刊より)
京都府出身。1956年、夫の啓助さんと漫才コンビを結成。大きな口が特徴で、とぼけた味わいの啓助さんに突っこみを入れる漫才で人気者になり、「てなもんや三度笠」「スチャラカ社員」などテレビのお笑い番組で活躍した。
離婚後も、コンビは継続。司会を務めた関西テレビ系の「唄子・啓助のおもろい夫婦」は長寿番組として親しまれた。個性派女優として、テレビドラマ「渡る世間は鬼ばかり」などでも活躍した。

「南国土佐を後にして」や「学生時代」などのヒット曲で知られる歌手のペギー葉山(ぺぎー・はやま)さんが 4月12日、肺炎のため死去。83歳。( 4/13 読売新聞朝刊より)
東京都出身。高校在学中からジャズバンドの専属歌手として活動を開始。進駐軍クラブなどで米国のジャズやポップスを歌った。1952年に「ドミノ」でレコードデビュー。59年の「南国土佐を後にして」では、望郷の念を描いた叙情歌をつややかに歌い上げ、大ヒットさせた。
この曲が転機となり、凛とした存在感のある歌声で幅広い作風の曲を歌った。「つたの絡まるチャペルで」と歌い始める「学生時代」はキャンパス・ソングのはしりとされてロングセラーに。米国で見たミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」に感銘を受け、劇中歌「ドレミの歌」に自ら訳詞をつけた。「ドはドーナツのド レはレモンのレ」と歌うペギー版は、現在も親しまれている。
NHK紅白歌合戦の司会を務めるなどテレビの世界でも活躍。特撮ドラマ「ウルトラマンタロウ」では、人間の姿となった「ウルトラの母」を演じた。
夫は俳優の根上淳さん(2005年死去)で、介護の様子を記録した著書も出版した。1995年に紫綬褒章。2004年に旭日小綬章。07〜10年に日本歌手協会会長を務めた。

映画監督の坂野義光(ばんの・よしみつ)氏が 5月 7日、くも膜下出血のため死去。86歳。( 5/10 読売新聞朝刊より)
愛媛県今治市出身。東大卒業後、東宝に入社。黒沢明監督などの助監督を経て、1971年に「ゴジラ対へドラ」で監督デビュー。2014年の米ハリウッド版「GODZILLA ゴジラ」のエグゼクティブ・プロデューサーも務めた。日本テレビの紀行番組「すばらしい世界旅行」の制作にも携わった。著書に「ゴジラを飛ばした男」がある。

「瀬戸の花嫁」「よこはま・たそがれ」など、数多くのヒット曲を残した昭和歌謡の第一人者の作曲家で、歌手としても活躍した平尾昌晃(ひらお・まさあき)氏が 7月21日、肺炎のためため死去。79歳。( 7/23 読売新聞朝刊より)
東京に生まれ、その後、神奈川県藤沢市に転居した。慶応高時代にバンドのボーカルとして米軍キャンプ回りを始め、1958年に歌手としてレコードデビュー。山下敬二郎さん、ミッキー・カーチスさんとともに「ロカビリー3人男」と呼ばれ、脚光を浴びた。
60年代後半からは作曲家として活躍。布施明さんの「霧の摩周湖」や、小柳ルミ子さんの「わたしの城下町」「瀬戸の花嫁」、五木ひろしさん「よこはま・たそがれ」などをヒットさせた。五木さんが歌った「夜空」は73年の日本レコード大賞に輝いている。親しみやすいメロディーを生みだし、歌謡曲の黄金時代を支え、長きにわたって日本の音楽界をリードした。
近年はNHK紅白歌合戦のフィナーレで披露される「蛍の光」の指揮者を務めていた。

「聖母たちのララバイ」「時間よ止まれ」などのヒット曲や童謡「北風小僧の寒太郎」の歌詞で知られる作詞家で脚本家の山川啓介(やまかわ・けいすけ)氏が 7月24日、肺がんのためため死去。72歳。( 7/27 読売新聞朝刊より)
長野県出身。早大在学中に作詞を始めた。作曲家のいずみたくさんに見いだされ、青春ドラマの主題歌「太陽がくれた季節」(歌・青い三角定規)で注目された。岩崎宏美さん「聖母たちのララバイ」、中村雅俊さん「ふれあい」、矢沢永吉さん「時間よ止まれ」など劇的で情景の浮かぶ名曲を作詞。アニメ「銀河鉄道999」の劇場版の主題歌(共作)や「宇宙刑事ギャバン」など特撮テレビ番組の主題歌も手掛けた。
子供向けの歌の作詞には、本名・井出隆夫を使用。NHKの幼児番組「おかあさんといっしょ」に長年携わり、「にこにこ、ぷん」「ドレミファ・どーなっつ!」など着ぐるみ人形劇の原作・脚本も担当した。ミュージカルの分野では、大竹しのぶさん主演「にんじん」の作詞・脚本なども手掛けた。

俳優の中島春雄(なかじま・はるお)氏が 8月 7日、肺炎のためため死去。88歳。( 8/ 8 読売新聞夕刊より)
山形県酒田市出身。1954年、シリーズ第1作となる映画「ゴジラ」から着ぐるみの中に入ってゴジラを演じ、シリーズ12本で同役を務めた。56年の映画「空の大怪獣ラドン」など、映画、テレビで多くの怪獣役を務めた。著書に「怪獣人生 元祖ゴジラ俳優・中島春雄」がある。

俳優、声優の槐柳二(さいかち・りゅうじ)氏が 9月29日、うっ血性心不全のため死去。89歳。(10/ 3 読売新聞朝刊より)
アニメ「天才バカボン」のレレレのおじさん役や「赤毛のアン」のマシュウ役などを担当。俳優としても、井上ひさしさん作の舞台などに出演した。

「悲しくてやりきれない」などのヒット曲で知られるフォークグループ「ザ・フォーク・クルセダーズ」の元メンバーで、フォーク歌手のはしだのりひこ氏が12月 2日、死去。72歳。(12/ 3 読売新聞朝刊より)
京都市出身。きたやまおさむさんや加藤和彦さんが1965年に結成し、「帰って来たヨッパライ」などをヒットさせた「ザ・フォーク・クルセダーズ」に参加し、「関西フォーク」ブームの先駆けとなった。解散後、別のグループで活動。ヒット曲に「風」「花嫁」などがある。