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選評  出版関係物故者  放送関係物故者

対象作品は発表された年ではなく、サイト主宰者が実際に目にした年のものとしています。



部門ノミネート作品ベスト作品
図書部門 小説の部 「青春の門 風雲篇」「64(ロクヨン)」「顔 FACE」 「64(ロクヨン)」
漫画の部 「現代コミクス版 ウルトラマン」 該当作なし
映像部門 映画の部 「64-ロクヨン」「2001年宇宙の旅」「誰も知らない」 該当作なし
テレビドラマの部 「義母と娘のブルース」「ハゲタカ」「満願」「乱反射」「遙かなる山の呼び声」 該当作なし
アニメーションの部 「ちびまる子ちゃん」「クレヨンしんちゃん」 該当作なし

2018年選評

与志田選2018年総括。ノミネートに入れていない作品から一言。『院長選挙』、『カネと共に去りぬ』、『祝葬』−この年、久坂部羊作品は3冊読了。『西郷どん』−放送期間中に番宣的なスペシャルをはさむなど、民放っぽい編成はやめてもらいたい。大河ファンにはまったくもって逆効果。たとえ視聴率が取れなくても、NHKらしく動じない姿勢があってほしい。実際、これでもかというくらい面白くなかったのは確かなんだけど。 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』−結局、最後まで話がよくわからなかった。「さらば−」って、こんな話だったっけ。( 19/07/14 )

<図書部門>
『青春の門 風雲篇』(五木寛之・講談社刊)
前作<挑戦篇>(文庫版)から7年。まだ続く物語に感慨もひとしおです。
『64(ロクヨン)』(横山秀夫・文藝春秋刊)
映画がことのほかよい出来だったことから、すぐに原作が読みたくなりました。映画のキャスティングを頭に思い浮かべながら読み進め、どっぷりとその世界に浸りました。そして、映画の限られた時間内では描ききれていない登場人物の心情や台詞にすこぶる心揺さぶられました。同じ組織を別の視点から描いたD県警シリーズの『陰の季節』、『動機』、『顔 FACE』を続けて読むと、面白さはさらに増幅。いずれも短編とは思えない読み応えで、大いに引き込まれました。
『現代コミクス版 ウルトラマン』(井上英沖・復刊ドットコム刊)
復刊ドットコムからは欲しい本がたくさん出ているものの、どれも少し高くて、やすやすとは買えません。でも、これはあまりにも懐かしく、えい、やっ、と買ってしまいました。それこそ50年ぶりの再会。各号の表紙がカラー口絵としてまとめられているのもマル。みんなが言っているように、井上英沖以外のタイトルも別巻として出して欲しいです。

<映像部門>
『64-ロクヨン』( 3/18〜 3/19・TBSテレビ系)
何の予備知識もなしに、誘拐事件を主軸にしたサスペンスものと思って見始めたら、どっこい捜査面よりも組織内の人間関係の描写に重きを置いたドラマ展開で、逆にそのことで大いにはまりました。ただどうしても納得がいかないのが、殺人まで起こすような犯人が自分の子どもを誘拐された(と思い込んだ)とき、あそこまで必死になるかというところ。また子どもを殺された父親が電話帳を頼りに片っ端から電話を掛けて、電話の声だけで犯人を突き止めるところ。その執念を描きたかったのかもしれないけど、いささか無理があるのではと感じてしまいます。ドラマ版もDVDを借りてきて見てみると、なるほど原作に比較的忠実という印象で決して悪くはないのですが、ここは映画版のキャスティングに拍手を贈りたいです。
『義母と娘のブルース』( 7/10〜 9/18・TBSテレビ系)
綾瀬はるかという女優はとらえどころがありません。演技の幅が広いというか、ここでまた新境地を開いたというべきでしょうか。とにかく彼女の魅力が全面に引き出されてました。前年の「直虎」で感じましたが、森下佳子の脚本はうまいです。原作は4コマ漫画らしいけど。
『乱反射』( 9/22・テレビ朝日系)
わが子を失った若い父親の復讐劇かと思いきや、結局何も果たせぬまま終わってしまうというラスト。意表を突かれるとともに、世の中の理不尽さを巧みに描いたところに感心しました。正義感と行動力を兼ね備えたヒーローも登場しなければ、完全な悪人も登場しない。ある意味非常にリアルなドラマではないかと思います。


2018年出版関係物故者

漫画原作者の狩撫麻礼(かりぶ・まれい)氏が 1月 7日、死去。70歳。( 1/16 読売新聞朝刊より)
多数のペンネームを使い分け、漫画家の谷口ジロー、かわぐちかいじさんらの原作を手がけた。代表作に「迷走王 ボーダー」(たなか亜希夫・画)など。土屋ガロン名義の「ルーズ戦記 オールド・ボーイ」(嶺岸信明・画)は韓国で映画化され、2004年、カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得したほか、米ハリウッドでも映画化された。

怪奇漫画「エコエコアザラク」で知られる漫画家の古賀新一(こが・しんいち)氏が 3月 1日、死去。81歳。( 3/17 読売新聞朝刊より)
福岡県生まれ。1958年、貸本向け単行本「黒猫」でデビュー。「週刊マーガレット」誌に「白へび館」を連載し、60年代から怪奇漫画家として多数の作品を発表。「週刊少年チャンピオン」で75〜79年に連載された代表作「エコエコアザラク」は、黒魔術使いの少女、黒井ミサが、邪悪な欲望を持つ者に恐怖をもたらしていく連作で、当時のオカルトブームを背景に大ヒットし、たびたび映画化やテレビドラマ化された。

名探偵浅見光彦シリーズで知られるベストセラー作家の内田康夫(うちだ・やすお)氏が 3月13日、敗血症のため死去。83歳。( 3/19 読売新聞朝刊より)
東京都生まれ。コピーライター、CM制作会社経営を経て、46歳で自費出版した1980年の「死者の木霊」が編集者の目にとまり、作家になった。
82年の「後鳥羽伝説殺人事件」で、名家出身のハンサムなフリーライター浅見光彦を登場させ、素人探偵の主人公が取材旅行で殺人事件を解決する旅情ミステリーが人気を博した。軽く平明な文章と巧妙な物語作りで読者の心をつかみ、著作数は160冊以上、累計発行部数は約1億1500万部に上った。
作品はたびたびテレビドラマ化され、浅見光彦シリーズは浅見役を榎木孝明さん、辰巳琢郎さん、沢村一樹さんらが演じ、好視聴率を誇った。同シリーズの「天河伝説殺人事件」は91年に市川崑監督により映画化された。囲碁、将棋好きでも知られた。

「ちびまる子ちゃん」で知られる漫画家のさくらももこさんが 8月15日、乳がんのため死去。53歳。( 8/28 読売新聞朝刊より)
静岡県清水市(現静岡市)出身。1984年、短大在学中に漫画家デビュー。86年から漫画雑誌「りぼん」で「ちびまる子ちゃん」を連載。自身の少女時代をモデルに小学生「まる子」の日常をユーモラスに描き、とぼけたお父さんや、お金持ちの息子の花輪クン、真面目すぎる学級委員の丸尾君など、個性的なキャラクターも人気に。89年に講談社漫画賞を受賞した。
90年からアニメがフジテレビ系で放送され、作詞したテーマ曲「おどるポンポコリン」は日本レコード大賞を受賞。現在まで続く国民的長寿アニメとなった。
漫画は、シリーズ累計3200万部以上を記録した。エッセー集「もものかんづめ」「さるのこしかけ」もベストセラーとなった。

漫画家の国友やすゆき(くにとも・やすゆき)氏が 9月20日、死去。65歳。( 9/23 読売新聞朝刊より)
青年向け漫画誌で多くの連載を持ち、サラリーマンを主人公にした作品で人気を博した。代表作「100億の男」「幸せの時間」は、それぞれフジテレビ系で連続ドラマ化された。

「東大安田講堂事件」や「あさま山荘事件」の現場指揮官を務めた元内閣安全保障室長の佐々淳行(さっさ・あつゆき)氏が10月10日、老衰のため死去。87歳。(10/11 読売新聞朝刊より)
1954年に東大法学部を卒業し、現在の警察庁に入庁。全共闘などの学生が東大・安田講堂に立てこもった69年の「安田講堂事件」では、警視庁警備1課長として現場を指揮。72年の「あさま山荘事件」も陣頭指揮した。その後は防衛施設庁長官などを歴任し、86年に初代内閣安全保障室長に就任した。
退官後は危機管理の専門家として活動し、警察官僚時代の経験を題材にした著書も執筆。あさま山荘事件のノンフィクションは2002年に映画化された。

名古屋弁の検事を主人公にした推理小説「赤かぶ検事」シリーズなどで人気を博した作家の和久峻三(わく・しゅんぞう)氏が10月10日、心不全のため死去。88歳。(12/30 読売新聞朝刊より)
京都大法学部卒業後、新聞社での記者生活を経て、弁護士になった。その一方で小説を書き、1972年、「仮面法廷」で江戸川乱歩賞を受賞。弁護士作家ならではの視点で数多くの作品を発表し、法廷ミステリーの第一人者と言われた。「赤かぶ検事」シリーズや「京都殺人案内」シリーズなどはテレビ化され、人気となった。89年、「雨月荘殺人事件」で日本推理作家協会賞を受賞した。

漫画家の石川球太(いしかわ・きゅうた)氏が10月15日、死去。78歳。(12/29 読売新聞朝刊より)
動物漫画、冒険漫画の第一人者として知られ、迫力ある野生動物の描写に定評があった。代表作に「牙王」「ウル」「原人ビビ」など。

漫画家の長谷邦夫(ながたに・くにお)氏が11月25日、うっ血性心不全のため死去。81歳。(12/ 3 読売新聞夕刊より)
2008年に死去した漫画家の赤塚不二夫さんのブレーンとして「おそ松くん」や「天才バカボン」などの制作に参加。パロディー漫画の先駆者としても知られた。著書に「赤塚不二夫 天才ニャロメ伝」などがある。


2018年放送関係物故者

テレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」や、アニメ映画「火垂るの墓」などを手がけ、アニメーション界に大きな足跡を残した映画監督の高畑勲(たかはた・いさお)氏が 4月 5日、肺がんのため死去。82歳。( 4/ 6 読売新聞夕刊より)
三重県伊勢市生まれ。岡山県で育った。1959年、東大仏文学科を卒業。東映動画を経て、74年にテレビアニメシリーズ「アルプスの少女ハイジ」を発表した。85年、同社で後輩だった宮崎駿監督と「スタジオジブリ」を設立。88年には野坂昭如さん原作「火垂るの墓」を監督し、戦争の悲劇をリアルに描いた。監督作の「おもひでぽろぽろ」(91年)、「平成狸合戦ぽんぽこ」(94年)はその年の日本映画の配給収入1位となった。
98年に紫綬褒章。2014年には、権威あるフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭の名誉功労賞を受賞した。

シンガー・ソングライターの森田童子(もりた・どうじ)さんが 4月24日、死去。65歳。( 6/12 読売新聞夕刊より)
1970年代から80年代にかけて活躍。独特の暗さを帯びた歌で熱心なファンを獲得したが、その後は表舞台から遠ざかっていた。「春のこもれ陽の中で」と歌い出す「ぼくたちの失敗」が、93年にテレビドラマ「高校教師」の主題歌として使われ、大ヒットした。

「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」「傷だらけのローラ」などのヒット曲で知られる歌手の西城秀樹(さいじょう・ひでき)氏が 5月16日、急性心不全のため死去。63歳。( 5/17 読売新聞夕刊より)
広島県出身。1972年、「恋する季節」でデビュー。精悍な顔立ちと長身に恵まれ、郷ひろみさん、野口五郎さんと共に「新御三家」と呼ばれ、人気を集めた。
力強く、ダイナミックな歌唱とアクションが持ち味。「やめろと言われても」の歌い出しで有名な74年の「激しい恋」を始め、「ローラ」と絶叫する「傷だらけのローラ」や「ブーメランストリート」などを次々にヒットさせた。中でも79年に出した、米国の人気曲の日本語版「YOUNG MAN」は「YMCA」とアルファベットを示す振り付けとともに大流行した。
70年代のドラマ「寺内貫太郎一家」に出演。小林亜星さん演じる父親との激しい親子げんかが評判となるなど、テレビの世界でも人気を集めた。

映画「羅生門」「七人の侍」など黒沢明監督とともに数々の世界的な傑作を生み出した脚本家の橋本忍(はしもと・しのぶ)氏が 7月19日、肺炎のため死去。100歳。( 7/20 読売新聞夕刊より)
兵庫県出身。肺結核で療養中にシナリオ作家を志した。映画監督・脚本家の伊丹万作さんに師事し、1950年、黒沢監督との共同脚本による「羅生門」でデビュー。同作品はベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を獲得した。その後も「生きる」「悪い奴ほどよく眠る」などの黒沢映画の脚本チームで活躍した。
黒沢映画以外にも、「切腹」(小林正樹監督)、「白い巨塔」(山本薩夫監督)、「日本のいちばん長い日」(岡本喜八監督)などの名作、話題作を手掛け、骨太で優れた構成の脚本は日本映画の黄金期を支えた。
73年には、野村芳太郎監督らと橋本プロダクションを設立。その第1回作品「砂の器」(野村監督)の脚本を山田洋次さんと共同で書いた。森谷司郎監督と組んだ「八甲田山」は興行的にも大成功を収めた。手掛けた映画脚本は約70本にのぼる。
草創期のテレビドラマの脚本でも活躍、戦争犯罪で裁かれる庶民を描いた58年の「私は貝になりたい」、59年の「いろはにほへと」は、ともに芸術祭賞を受けた。
2006年には著書「複眼の映像―私と黒澤明」を出版。13年には、脚本を手がけた1967年の映画「上意討ち」(小林監督)のテレビドラマ化に際し、自ら脚本を改稿した。
1991年に勲四等旭日小綬章受賞。

「熱中時代」など数々の人気ドラマを手がけた脚本家の布施博一(ふせ・ひろいち)氏が 8月13日、慢性腎不全のため死去。86歳。( 8/15 読売新聞朝刊より)
満州(現中国東北部)・奉天生まれ。1957年に脚本家デビュー。水谷豊さんが熱血漢の教師役などを演じて大ヒットした「熱中時代」(日本テレビ)をはじめ、ビートたけしさんの幼少期を描いた「たけしくんハイ!」(NHK)、連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」(同)など、ホームドラマを得意とした。2000年に糖尿病で失明した後も、ロングラン公演中の「友情〜秋桜のバラード」など演劇を中心に幅広く活躍した。

脚本家の石原武龍(いしはら・ぶりゅう)氏が 8月24日、胃がんのため死去。66歳。( 8/30 読売新聞朝刊より)
静岡県出身。1979年にテレビドラマ「七人の刑事」(TBS)でデビュー。「はぐれ刑事純情派」シリーズ(テレビ朝日)、NHK連続テレビ小説「やんちゃくれ」など数々のテレビドラマを手がけた。

人気アニメ「サザエさん」の主人公の母親フネの声を46年間担当した女優の麻生美代子(あそう・みよこ)さんが 8月25日、老衰のため死去。92歳。( 9/ 4 読売新聞朝刊より)
1969年の「サザエさん」初回放送から2015年まで磯野フネ役を務めた。アニメ「アルプスの少女ハイジ」のロッテンマイヤーの声も担当。バラエティー番組「和風総本家」では、ナレーションを務めた。

NHK大河ドラマ「草燃える」などを手掛けた演出家の大原誠(おおはら・まこと)氏が10月 6日、肺がんのため死去。80歳。(10/18 読売新聞朝刊より)
京大卒業後、1960年にNHK入局。大河ドラマ第1作の「花の生涯」で演出助手を務め、「徳川家康」「八代将軍吉宗」などを演出した。90年のNHKドラマスペシャル「不惑につき…」で芸術選奨文部大臣賞を受賞。99年にNHKを退職後、民放のドラマを手掛けた。

カナダ人俳優のダグラス・レイン氏が11月11日、死去。90歳。(11/14 読売新聞夕刊より)
スタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」(1968年)で、暴走する宇宙船搭載の人工知能「HAL9000」の声を担当。「コンピューターの反乱」を抑揚のない口調で演じ、強烈な印象を残した。

アニメーターの中邨靖夫(なかむら・やすお)氏が11月25日、慢性骨髄性白血病のため死去。78歳。(11/30 読売新聞朝刊より)
ヤンマーディーゼル(現ヤンマー)のテレビ天気予報番組のアニメキャラクター「ヤン坊マー坊」の生みの親。同番組は、全国の民放局で2014年まで、55年にわたり放送された。

ドラマ演出家の中川晴之助(なかがわ・はるのすけ)氏が11月25日、肺炎のため死去。87歳。(19/ 2/22 読売新聞朝刊より)
1955年、ラジオ東京(現TBS)に入社。特撮ドラマ「ウルトラQ」や渥美清さん主演の「泣いてたまるか」といった作品を手がけた。父は画家の中川一政さん(1991年死去)、女優の中川安奈さん(2014年死去)は次女。

テレビアニメ「一休さん」の一休さんなど、数多くのキャラクターの声を演じた声優の藤田淑子(ふじた・としこ)さんが12月28日、浸潤性乳がんのため死去。68歳。(12/29 読売新聞朝刊より)
「キテレツ大百科」のキテレツ、「デジモンアドベンチャー」の八神太一など少年役を多く演じたほか、女優やテレビ番組のナレーターとしても活躍した。