トップ > 年間エンターテインメント総括

選評  出版関係物故者  放送関係物故者

対象作品は発表された年ではなく、サイト主宰者が実際に目にした年のものとしています。



部門ノミネート作品ベスト作品
図書部門 小説の部 「破裂」「脳男」「廃用身」「クライマーズ・ハイ」 「廃用身」
漫画の部 「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」 該当作なし
映像部門 映画の部 「タイムマシン」「ALWAYS 三丁目の夕日」「THE 有頂天ホテル」 該当作なし
テレビドラマの部 「新選組!! 土方歳三 最期の一日」「古畑任三郎 FINAL」「戦国自衛隊 関ヶ原の戦い」 該当作なし
アニメーションの部 「ちびまる子ちゃん」「クレヨンしんちゃん」「ブラック・ジャック」「人造人間キカイダー THE ANIMATION」 該当作なし

2006年選評

与志田選2006年総括。今期は小説に思いのほか収穫がありました。その一方で、映画やテレビドラマの印象はいまひとつ。後年まで記憶に残るであろうと思わせるタイトルは数少なくあります。とくに連続ドラマに関しては、ノミネートすら皆無でした。( 07/01/23 )

<図書部門>
『脳男』(首藤瓜於・講談社刊)
少し前の乱歩賞作品。そのタイトルに惹かれるものがあり、気になっていた作品です。特異な登場人物の過去が少しずつ明らかにされ、渦中で活躍する(?)中盤以降の展開が俄然面白くありました。著者には"脳男"のその後を書いてほしいです。
『廃用身』(久坂部羊・幻冬舎刊)
作中の医師が書いた医学的ルポを前半部に配し、後半にはその著作の過程における背景が編集者の手によって明かされるという凝った構成。何の予備知識を持たずに読み始めたのがよかったのでしょう。自分にとってひさびさに味わうエポックメイキングな作品でした。とにかくその形容のしがたいシニカルな結末にガツンとやられた感じです。同著者が本作以後に発表した『破裂』もこれより先に読んで十分面白かったのですが、ここで展開される凄みにはおよばないような気がします。
『クライマーズ・ハイ』(横山秀夫・文藝春秋刊)
前年に見たテレビドラマの出来が非常によく、原作を読んでみたところ、これがまたよかった。時間的制約からドラマでは完全に描かれなかった主人公たちの立場や微妙な心情を知ることができ、読み進むにつれてぐいぐいと引き込まれました。ドラマは今年DVDでもう一度見て男泣きです。

<映像部門>
『ALWAYS 三丁目の夕日』(12/ 1・日本テレビ系)
―2005年"ALWAYS 三丁目の夕日"製作委員会 吉岡秀隆 山崎貴監督
ストーリー展開はいたってオーソドックス。それでありながら見るものを釘付けにさせるのは、監督の演出手腕の冴えでしょう。劇中に散りばめられた仕掛けの数々に誰もがときめきを覚えずにはいられません。
『THE 有頂天ホテル』(12/30・フジテレビ系)
―2005年フジテレビほか 役所広司 三谷幸喜監督
前二作にも増して三谷幸喜らしさが前面に押し出された劇場作品です。あれだけ雑多な人物を登場させながらそれぞれの性格付けを怠らず、同時に細かな伏線をまとめあげる構成はさすが三谷ならでは。
『新選組!! 土方歳三 最期の一日』( 1/ 3・NHK総合)
大河の続編というNHKらしからぬ(?)企画に拍手。派手な戦闘シーンをほとんど省き、土方、榎本、大鳥の主要キャスト三人の台詞劇を中心に展開される本作は、新たな戊辰のドラマをつむぎ出したといえましょう。
『戦国自衛隊 関ヶ原の戦い』( 1/31〜 2/ 7・日本テレビ系)
オリジナルの角川映画は自分にとって思い入れのある作品なだけに、昨今リメイクされた映画がつまらなかったのは非常に残念。そんなところに見たこのドラマ版が思いのほかよい出来で、大いに堪能しました。
『人造人間キカイダー THE ANIMATION』(10/ 7〜12/30・TOKYO MX)
その原作を忠実に映像化したOVA。70年代特撮全盛期における実写版は子供心を大いに魅了しましたが、原作のファンでもあった自分にとって、いつかはこんな作品が世に出ることを期待していたのでした。


2006年出版関係物故者

ポーランドのSF作家、スタニスワフ・レム氏が 3月27日死去。84歳だった。( 3/28 読売新聞夕刊より)
現在のウクライナ出身。1961年に発表したSF小説「ソラリス」(邦訳・ソラリスの陽のもとに)は、72年に旧ソ連のアンドレイ・タルコフスキー監督が「惑星ソラリス」、2002年に米国のスティーブン・ソダーバーグ監督が「ソラリス」として映画化。著作は40か国語に翻訳され、2700万部が出版されている。

作家の村上元三(むらかみ・げんぞう)氏が 4月 3日、心不全のため死去。96歳だった。( 4/ 5 読売新聞朝刊より)
朝鮮・元山生まれ。1938年、生涯の師と仰ぐ長谷川伸の門下に入り、41年「上総風土記」他で直木賞を受賞。49年から新聞に連載した「佐々木小次郎」で一躍人気作家となり、「次郎長三国志」「水戸黄門」など数々の時代小説を発表、戦後の大衆文学を先導した。大河ドラマ「赤穂浪士」など映画やテレビの脚本も手がけ、65年にNHK放送文化賞を受賞した。

作家の吉村昭(よしむら・あきら)氏が 7月31日、すい臓がんのため死去。79歳だった。( 8/ 2 読売新聞朝刊より)
東京都出身。旧制学習院高等科に在学中のころから小説を書き始め、丹羽文雄主宰の同人誌「文学者」に参加。四度、芥川賞候補になったが、苦渋を味わい続けた。1966年「星への旅」で太宰治賞を受け、同年、初の戦史小説「戦艦武蔵」がベストセラーに。以後、関係者への取材に基づく実証的で硬質な記録文学を数多く発表。「神々の沈黙」「関東大震災」「ポーツマスの旗」など多彩な創作活動を精力的に続けた。
85年、脱獄王と言われた男の生涯を描いた「破獄」で読売文学賞。同年、肺がんで壮絶な死を遂げた弟を見つめた「冷たい夏、熱い夏」で毎日芸術賞を受けた。97年に日本芸術院会員。妻は芥川賞作家の津村節子さん。

アメリカのSF作家、ジャック・ウィリアムスン氏が11月10日死去。98歳だった。(11/14 読売新聞朝刊より)
20歳で「メタル・マン」を著して以来、核ロケットによる月探査や反物質など斬新なテーマで活躍、"米SFの父"と呼ばれた。日本でも翻訳出版された「宇宙軍団」「ヒューマノイド」などで知られる。


2006年放送関係物故者

脚本家の佐々木守(ささき・まもる)氏が 2月24日、すい臓がんのため死去。69歳だった。( 2/27 読売新聞朝刊より)
映画やテレビドラマ、アニメなどの脚本で活躍。大島渚監督の映画「絞死刑」や、テレビ「ウルトラマン」「柔道一直線」「アルプスの少女ハイジ」などの作品を手がけた。

演出家で作家の久世光彦(くぜ・てるひこ)氏が 3月 2日、虚血性心不全のため死去。70歳だった。( 3/ 3 読売新聞朝刊より)
東京都出身。東大卒業後の1960年にKRテレビ(現TBS)に入社。62年のドラマ「パパだまってて」で演出家デビューした。70年代に入って、「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」「ムー」などのホームドラマを次々と生み出し、時代を代表するヒットメーカーに。79年にTBSを退社し、製作会社「カノックス」を設立。軽快な作品の一方で「向田邦子シリーズ」のような繊細でしみじみとした人間ドラマも手がけ、92年には「女正月」で芸術選奨文部大臣賞を受けた。
映画監督、作詞、舞台演出にも乗り出すとともに、作家としても活躍。94年に「一九三四年冬−乱歩」で山本周五郎賞、97年に「聖なる春」で二度目の芸術選奨文部大臣賞を受賞した。98年に紫綬褒章。

声優の鈴置洋孝(すずおき・ひろたか)氏が 8月 6日、肺がんのため死去。56歳だった。( 8/11 読売新聞朝刊より)
「機動戦士ガンダム」のブライト・ノアや「ドラゴンボール」の天津飯など、数多くのアニメで活躍した。

声優の武藤礼子(むとう・れいこ)さんが10月29日、急性心不全のため死去。71歳だった。(10/31 読売新聞朝刊より)
テレビアニメ「ふしぎなメルモ」の主人公や「ムーミン」のノンノンなどを担当し、外国映画でもグレース・ケリーやエリザベス・テーラーらの声を吹き替えた。

映画監督で演出家の実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)氏が11月29日、がんのため死去。69歳だった。(11/30 読売新聞夕刊より)
東京都出身。早稲田大学卒業後の1959年に東京放送(現TBS)に入社。66年の「ウルトラマン」をはじめ、「ウルトラセブン」「怪奇大作戦」などの特撮ドラマを演出し、69年の短編「宵闇せまれば」で映画を初監督。翌年同社を退社後、長編第一作の「無常」を手がけ、映画「曼荼羅」「あさき夢みし」などで、日本的な精神風土に迫る作品を撮った。
88年には、「帝都物語」で日本映画初のハイビジョンを導入、「屋根裏の散歩者」「D坂の殺人事件」で、江戸川乱歩の耽美的な世界を映像化した。また、99年の「狂ってゆくレンツ」など、オペラの演出も手がけている。東京芸大名誉教授を務め、「星の林に月の船」などの著書もある。

作曲家の宮内國郎(みやうち・くにお)氏が11月27日、大腸がんのため死去。74歳だった。(12/ 1 読売新聞朝刊より)
「ウルトラマン」「快獣ブースカ」など、おもに特撮ドラマの音楽を手がけた。